第一章 「農村のマーケット化」「農業の観光化」」とはなにか

序章でもあげたが、近年は農業の衰退と農村の活力の後退は顕著に見られる。衰退・後退の現象は、過疎・高齢化・担い手不足・耕作放棄農業生産額の減少・組織活動の低下などとなって現れており、それによって、農村住民の活力と農業に対する意欲の引き下げをより大きくしている。しかも、長期における減反政策と多くの農作物の価格の低迷・低下がそれらの方向を助長しているように思う。全体で見ると、飼料や穀物を中心に輸入が増え、食糧自給率は42%となっているし、実質の農業生産額も昭和61年を境に変動はしながらも低下傾向をたどっていることも事態の問題性を的確に表している。
しかもこれらのことは農業だけでなく、農村地域の商工活動にも影響を大きくし、それらの後退・停滞もまた深刻である。それらはバブル経済崩壊の影響だけでなく、農業の衰退と過疎・高齢化が多分に作用を与え農村地域経済の弱体化を強めている。
このように弱まっている農業・農村の再構築はどのようにすれば図れるのか。それは、農業の生産だけでなく、農産物の加工、販売はもちろんのこと商業・工業・サービス業もむすびつけ人と人とのコミュニケーション、あるいは景観や自然の活用、さらには環境・休養も組み入れた幅広い活動が重要と考える。それは、これまでのシステムに換わる新たなシステムの構築が必要なことを意味している。なぜならば、生産や加工などの単独の事業・活動から、それらの組み合わせを含む地域の産業を構築する活動が重要性を増すと考えるからである。というのも、そこでは、生産・加工などの基本的な機能に加えて、交流・文化などの付加的・情報的な機能を組み合わせた取り組みによって地域の活性化・成長を図っているところがでているからである。
ここで重要になってくるかだいは、農村地域産業の再構築である。中山間地域を中心とする農村の過疎化は、地域内で他産業並みの賃金の得られる就業の場の確保ができないためにおおむね現在50歳以上になるの男性と中年以上の女性の多くの人たちが、都市部に流出したことによって進行したと考えられる。また、近くに就業の場がある農村地域の人たちは在宅兼業の形を深化させた。
よって、こうした状況のもとで、農業を中心とする地域の産業は度のようにすれば構築できるのか。その場合の農村地域産業の構築はこれまでと同様の農業生産中心の所得の確保や生産性の向上という観点だけではたりなくなっている。地域の人たちが意欲と喜びを得る仕組みは、農業を含めて、労働を通した人とのコミュニケーション、などから得られる場合が少なくない。農村の人たちは「農村に人がくる」「作った産品が売れる」「コミュニケーションがある」などに意欲と喜び感じているしかも、それは、一定の収入と合わさって確かなものになっている。そのために、農業中心地域の産業構築課題は収入だけでなく、信頼ある人とのふれあいを重視することによる、新たな観点からの構築が必要と考える。
そのためにはどうすればよいか。それには、農村の持ついろいろな機能を活用し、地域の特産物(農産物・加工品など)・農村の場(景観など)・農村人の心(あたたかみのある心からでる信頼,サービス)をあわせて消費者らに提供することが重要と考える。また、農村が持っているものを、信頼を軸に丸ごと産業化することが大切だと考える。それは、これまでの生産活動をもとにしながらも、業種間の枠を取り払い農村地域資源の見直しによるその有効な活用と、農村地域文化の再生によって農村の再構築を図ることである。
これは、農村を生産空間であるというとらえ方から、人間の営み空間に再編成することでもある。農村が持つ機能を都市部にて提供することは、農村の魅力をひっくるめてかつ連携を図って産業化することに他ならない。そのなかでも「農村の場と、農村で生産したものと、農村人の心を、合わせて提供する産業活動」を「農村マーケット化」「農業の観光化」と長谷山さんは捉えているが私もこのようにとらえることにする。
それらの事業に取り組む市町村は前にもあげたが、それらの事業展開の詳細は第二章で取り上げることにする。

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