農業、この言葉から受ける印象は何であろう。ださい、くらい、将来性がないなどという印象を持つ人は少なくないだろう。確かに、農業はかっこいい職業ではないし、歴史的に見ても荘園における農奴や小作人など農業に従事していた人々のほとんどが貧しかったであろう。実際、現代の農業は衰退し、農村の活力も後退しているように見える。そしてそこから過疎や高齢化・担い手不足・耕作放棄・農業生産額の減少などの問題がおきている。その意味では、人々の農業や農村に対するイメージはそんなに間違っていない気がする。しかし、私そうは思わない。私の実家が農業をしているということもあるだろうが理由はそれだけではない。それは、従来の農業ではない新しいタイプの農業が出現したからである。私は、その中の二つに注目しようと思う
一つ目は、“農村マーケット化”と呼ばれるものである。それは、農場の中にマーケットを作って消費者が直接買いにくる形態を取り、農場自体に安らぎがあって、ほっとするような光景を作る。しかもその農業は生産者と消費者との間に、信頼とコミュニケーションがあるというものである。これは、従来の生産から物事を考えて対応する農業ではなく、世の中の動向と、ニーズを踏まえて作った農作物や加工品を農村という場で思いを込めて提供する農業なのである。
二つ目は、“観光農業”と呼ばれるものである。これは「農業は無限の観光資源」とし、農業と農村を大いに売りに出し、農業と農村を“観光化”しようとするものである。
これらの事業に取り組んでいる市町村は少なくない。山形県寒河江市・岩手県藤沢町・三重県阿山町、そして私の実家のある山梨県勝沼町である。もちろん私の実家も観光ぶどう園をしている実家が農家ということからも私は農業のもつ将来性に興味を持った。そこで私は、“農村マーケット化”と“農業の観光化”のつをキーワードに、先にあげた市町村の事業展開を比較することで、産業としての農業の可能性を考えていきたいと思う。
目次